障害者グループホーム開設に必要な消防法上の設備基準を解説。消火設備・避難経路・防火対象物使用開始届などの必須要件や注意点を分かりやすくまとめています。

消防法における設備基準

更新日:2025/12/04

消防法における設備基準について

障害者グループホームを開設するためには、障害者総合支援法に基づく「指定申請」を行い、法令で定められた設備基準に適合していることが求められます。
この「設備基準」は、障害者総合支援法だけでなく、建築基準法・消防法など、複数の関連法令にまたがって定められています。
本記事ではその中でも、消防法の規制・基準に焦点を当てて解説します。


設置設備について

消防法では、グループホームは『寄宿舎』に分類され、厳しい基準が設けられています。
また、利用者の障害の区分や施設の床面積により基準が異なります。
求められることが多い代表的な設備は以下の通りです。


障害支援区分4以上の者が概ね8割を超える施設 それ以外の施設
消火器 全部 延べ面積が百五十平方メートル以上

スプリンクラー設備
 

全部 平屋建以外の防火対象物で、床面積の合計が六千平方メートル以上

自動火災報知設備
 

全部

全部 
(利用者を入居・宿泊させるもの以外は、床面積の合計が三百平方メートル以上)

漏電火災警報器
 

延べ面積が三百平方メートル以上のもの

火災報知設備
 

全部(自動火災報知設備と連動して起動) 延べ面積が五百平方メートル以上

非常警報器具
 

収容人員が五十人以上

避難器具
 

二階以上の階又は地階で、収容人員が二十人以上

誘導灯
 

全部


これらの設備は、単に設置すればよいわけではなく、定期的な保守点検を行い、常に法令に適合している状態を維持することが求められます。


なお、以下の工事及び整備は消防設備士でなければ行ってはならないと定められています。


一 屋内消火栓せん設備
二 スプリンクラー設備
三 水噴霧消火設備
四 泡あわ消火設備
五 不活性ガス消火設備
六 ハロゲン化物消火設備
七 粉末消火設備
八 屋外消火栓せん設備
九 自動火災報知設備
九の二 ガス漏れ火災警報設備
十 消防機関へ通報する火災報知設備
十一 金属製避難はしご(固定式のものに限る。)
十二 救助袋
十三 緩降機



建物の構造や避難経路について

建物の構造や避難経路についても、消防法では細かく基準が設けられています。
たとえば、火災の拡大を防ぐための防火壁や防火扉、煙を遮断するための防煙設備の設置だけでなく、非常時に利用者が速やかに避難できるよう、階段・通路・非常口の幅や配置、経路の分かりやすさについても規則があります。
このように法律で具体的な基準を定めることで、建物を利用する人々の安全を守り、火災発生時の被害を可能な限り抑える仕組みが整えられています。


防火対象物使用開始届について

グループホームの指定申請時には、防火対象物使用開始届の提出を求められる場合があります。(※提出の要否は指定権者によります)
これは、建物を使用開始する際に消防署へ提出する書類であり、防火管理者の選任や防火管理計画の策定について報告するものです。


参考 ☞防火対象物使用開始届出書


提出後、消防署は防火設備や避難設備の適合状況を確認し、必要に応じて指導や改善を求めます。
また、指定権者によっては、消防検査済証の副本(控え)を提出するよう求められる場合があります。


※消防検査済証とは、建物が消防法に適合していることを証明する書類です。


※防火管理者とは、消防法に基づき、防火管理に関する責任を担う人です。
火災予防のために必要な業務(防火管理計画の策定など)を行います。
一定規模以上の建物では、防火管理者を選任することが義務付けられており、所定の防火管理者講習を受講することで資格を取得できます。



その他の法令との関係

グループホームの設備基準にはその特性上、消防法以外にも様々な関係法令が関連してきます。

上記以外にも関係法令が存在し、設備基準の運用は指定権者(都道府県・政令市等)によって異なる場合があります。
そのため、計画段階で指定権者への確認が不可欠です。


まとめ

消防法に基づく設備の設置や避難経路の確保には、非常に複雑で専門的な規定があります。
とくにグループホームとして使用する物件を選定する際には、現状の建物が基準を満たしていないケースも多く、必要に応じて改修や工事を行うことが少なくありません。
また、工事を進める過程では注意すべき点もあります。
『工事期間の延長や追加費用の発生』『事業者と工事業者との間での認識の違い』など、さまざまなトラブルが起こり得ます。
これらの問題は、結果として大きなコストや時間のロスにつながり、事業の開始時期や運営計画に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、物件選定や工事の計画段階から、消防設備士が在籍する消防設備の保守・メンテナンス会社や、行政手続きに精通した行政書士など、専門家に相談しておくことが推奨されます。
早い段階で専門家の知見を取り入れることで、不要なトラブルを未然に防ぎ、安心して事業をスタートさせることができます。


なお、グループホームの設備基準に対応した賃貸物件を取り扱っている不動産会社もあります。
設備基準への対応にお悩みの場合は、そのような不動産会社を一度チェックしてみるのも有効な方法です。





 

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