更新日:2026/09/14
介護・福祉業界では慢性的な人材不足が続いており、外国人材の受入れを検討する事業所も増えています。
介護分野で外国人材を受け入れる制度には、技能実習、特定技能、EPA(経済連携協定)などがあります。
ただし、これらの制度は目的や受入れ方法、本人に求められる技能・日本語能力、事業所側の支援内容などがそれぞれ異なります。
制度の違いを十分に理解しないまま受入れを進めると、「思っていた業務に従事してもらえない」「教育や支援の負担が想定以上だった」といった問題につながる可能性があります。
この記事では、介護事業所が知っておきたい技能実習・特定技能・EPAの違いを比較し、それぞれどのような事業所に向いているのかを解説します。
介護分野で外国人材を受け入れる代表的な制度として、技能実習、特定技能、EPAがあります。
技能実習は、技能・技術・知識の移転を通じた国際協力を目的とした制度です。
特定技能は、人手不足に対応するため、一定の技能や日本語能力を有する外国人材を受け入れる制度です。
EPAは、日本とインドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定に基づき、介護福祉士候補者を受け入れる制度です。
このように、同じ「外国人介護人材」であっても制度の目的が異なります。そのため、事業所がどの制度を利用するかによって、採用方法や受入れ後の対応も変わってきます。
技能実習制度は、日本で技能・技術・知識を習得した外国人が、母国へ技能を移転することを目的とした制度です。
介護分野も技能実習の対象職種となっており、一定の要件を満たした外国人が介護施設などで実習を行います。
技能実習では、技能実習計画に基づいて実習を行うため、受入れ事業所には単なる労働力としてではなく、技能を身につけてもらうための教育・指導が求められます。
また、受入れにあたっては監理団体を通じて手続きを行うケースが一般的です。
技能実習では、監理団体によるサポートを受けながら外国人材を受け入れられる点がメリットです。
また、介護分野では技能実習から特定技能へ移行するケースもあり、一定期間の育成を経て、引き続き人材として活用することも可能です。
技能実習では、技能実習計画に沿った教育・指導が必要になるため、事業所側の負担が生じます。
また、技能実習では転籍が原則として制限されているため、本人と事業所とのミスマッチが発生した場合でも、一般的な日本人従業員の転職のように自由に職場を変更できるわけではありません。
なお、技能実習制度は今後廃止され、育成就労制度へ移行することが決まっています。
そのため、これから外国人材の受入れを検討する場合は、現在の技能実習制度だけでなく、育成就労制度への移行も見据えて検討する必要があります。
特定技能は、人手不足が深刻な分野において、一定の技能や知識を持つ外国人材を受け入れるための在留資格です。
介護分野では、介護技能評価試験などの技能試験と、日本語能力に関する試験に合格することなどが基本的な要件となります。
ただし、技能実習2号を良好に修了した場合など、一定の要件を満たす人については、技能試験や日本語試験が免除される場合があります。
特定技能は、技能実習と比較して、外国人材を人手不足を補う戦力として受け入れることを重視した制度といえます。
特定技能では、一定の技能・日本語能力を有する外国人材を受け入れるため、介護現場で比較的早期に戦力として活躍してもらえる可能性があります。
また、特定技能1号では一定の要件のもとで転職が認められているため、外国人本人にとっても勤務先を変更できる制度となっています。
さらに、技能実習を修了した外国人を特定技能へ移行させることで、これまで育成してきた人材を引き続き雇用することもできます。
特定技能では転職が認められているため、事業所にとっては人材流出の可能性があります。
そのため、外国人職員を長く雇用するためには、給与や労働条件だけでなく、職場環境や日本人職員との関係、生活面の支援などについても考える必要があります。
また、特定技能1号の外国人については、受入れ機関に一定の支援が求められます。支援業務については、登録支援機関へ委託することも可能です。
EPAは、日本と外国との経済連携協定に基づいて外国人材を受け入れる制度です。
介護分野では、インドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者を受け入れています。
EPAの大きな特徴は、候補者が日本の介護施設で就労・研修を行いながら、介護福祉士国家試験の合格を目指すことです。
そのため、EPAで外国人材を受け入れる事業所には、通常の業務指導だけではなく、日本語学習や国家試験の受験に向けた支援も重要になります。
EPA介護福祉士候補者は、介護福祉士国家試験への合格を目指しているため、介護の専門職として成長していくことが期待できます。
介護福祉士国家試験に合格して介護福祉士の資格を取得すれば、一定の要件のもとで在留資格「介護」へ移行することが可能です。
在留資格「介護」には在留期間の更新回数に上限がないため、長期的に日本で介護職として働いてもらうことを目指せる点も大きな特徴です。
EPAでは介護福祉士国家試験への合格が大きな目標となるため、事業所には日本語学習や国家試験対策などの支援が求められます。
そのため、単純に人手不足を補うという目的ではなく、将来的に専門性の高い介護人材を育成したい事業所に適した制度といえます。
また、EPAは経済連携協定に基づく制度であるため、一般的な求人募集のように自由に採用できる制度ではありません。
3つの制度には、それぞれ異なる特徴があります。
| 項目 | 技能実習 | 特定技能1号 | EPA |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 技能・技術・知識の移転 | 人手不足への対応 | 経済連携・介護福祉士育成 |
| 人材の特徴 | 育成を前提とした人材 | 一定の技能・日本語能力を有する人材 | 介護福祉士国家試験を目指す人材 |
| 転職・転籍 | 原則として制限あり | 一定の要件のもとで可能 | 原則として制限あり |
| 事業所の教育負担 | 大きい | 一定の支援が必要 | 大きい |
| 国家資格取得 | 必須ではない | 必須ではない | 介護福祉士取得が大きな目標 |
| 長期就労 | 制度移行に注意 | 1号から2号、さらに在留資格「介護」への移行などを検討 | 介護福祉士取得後は在留資格「介護」への移行が可能 |
外国人材を受け入れる際には、「どの制度が一番優れているか」ではなく、自分の事業所にどの制度が合っているのかを考えることが重要です。
できるだけ早く介護現場で活躍できる人材を確保したいのであれば、特定技能が有力な選択肢となります。
一定の技能や日本語能力を有する外国人材を受け入れる制度であり、技能実習のような育成を主目的とした制度とは性格が異なります。
一方で、特定技能では転職が認められているため、受入れ後の定着を考えると、働きやすい職場環境を整えることが重要です。
外国人材を受け入れながら、時間をかけて介護人材として育成していきたい事業所では、技能実習制度が選択肢となってきました。
ただし、技能実習制度は育成就労制度への移行が決まっているため、これから新たに受入れを検討する場合には、今後の制度変更を踏まえて判断することが重要です。
将来的に介護福祉士として長く働いてもらいたい場合には、EPAも選択肢となります。
EPAでは介護福祉士国家試験の合格を目指すため、日本語教育や国家試験対策など、事業所側の教育負担も大きくなります。
その一方で、国家資格取得後に在留資格「介護」へ移行できれば、長期的な就労につなげられる可能性があります。
外国人材の受入れでは、入国や在留資格の手続きを完了させることだけがゴールではありません。
重要なのは、受入れ後に外国人職員が職場に定着し、介護人材として成長できる環境を整えることです。
特に介護分野では、日本語によるコミュニケーションが利用者へのサービス提供に直結します。そのため、業務上必要な日本語を身につけてもらうための教育も重要になります。
また、外国人職員だけに日本のルールを理解してもらうのではなく、日本人職員側も外国人職員の文化や習慣を理解することが大切です。
外国人材を単なる「人手不足を補う労働力」として考えるのではなく、将来的な介護人材として育成する視点を持つことが、長期的な定着につながります。
介護分野で外国人材を長期的に雇用する場合、在留資格「介護」への移行も重要な選択肢となります。
在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を取得した外国人が、介護または介護の指導を行う業務に従事するための在留資格です。
在留資格「介護」は、特定技能1号のように在留期間が通算5年に限定される制度ではなく、在留期間の更新を続けることで長期的に日本で働くことが可能です。
そのため、外国人材の受入れを一時的な人手不足対策として考えるのではなく、介護福祉士資格の取得から在留資格「介護」への移行までを見据えた人材育成を行うことも重要です。
介護分野で外国人材を受け入れる制度には、技能実習、特定技能、EPAなどがあります。
技能実習は技能の移転・育成を目的とした制度、特定技能は人手不足に対応するための制度、EPAは経済連携協定に基づいて介護福祉士候補者を受け入れる制度という違いがあります。
また、技能実習制度については育成就労制度への移行が決まっているため、今後外国人材の受入れを検討する事業所は、制度変更についても確認しておく必要があります。
どの制度を利用するかは、受入れ費用や手続きの負担だけで判断するのではなく、事業所の教育体制、人材の定着、将来的な資格取得などを含めて検討することが重要です。
特に介護分野では、外国人材を長期的な人材として育成し、介護福祉士資格の取得や在留資格「介護」への移行まで見据えることで、より安定した人材確保につながる可能性があります。
外国人材の受入れを検討している介護・障害福祉事業者は、自事業所の採用方針や教育体制に合った制度を選択することが大切です。