更新日:2026/06/15
日本の外国人雇用は、単なる人手不足対策の枠を超え、企業経営そのものに直結するテーマとなっています。
特に中小企業では採用難が常態化しており、外国人材の活用は「選択肢」ではなく「前提条件」に近づいています。
一方で、外国人を雇用するためには在留資格制度の理解が不可欠であり、制度誤解による不法就労リスクや、採用後のミスマッチも依然として多く見られます。
本稿では、事業者が押さえるべき制度の全体像を整理します。
日本における外国人労働者数は年々増加し、すでに数百万人規模に達しています。
製造業、介護、外食、建設といった労働集約型産業では、外国人材なしでは事業継続が難しいケースも珍しくありません。
特に近年は、以下のような構造変化が進んでいます。
・ 技能実習生から特定技能人材への移行
・ 都市部だけでなく地方中小企業への拡大
・ 長期就労を前提とした制度設計への転換
このように、外国人雇用は「短期的な労働補填」から「中長期の人材戦略」へと変化しています。
外国人が日本で就労する場合、その活動内容は在留資格によって厳格に区分されています。
事業者としては、この区分を誤ると不法就労助長罪のリスクが生じるため、制度理解は必須です。
福祉事業における在留資格は大きく以下のように整理できます。
【在留資格「介護」】
在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格を取得した外国人が日本で介護業務に従事するための在留資格です。
介護福祉士養成施設を卒業した外国人や、EPA制度を利用して来日し介護福祉士資格を取得した外国人などが対象となります。
在留期間の更新に上限がなく、家族帯同も認められているため、長期的な人材確保が可能な点が特徴です。障害者支援施設や共同生活援助(グループホーム)などでも配置することができ、将来的な中核人材としての活躍が期待されています。
【特定技能】
特定技能は、人手不足が深刻な産業分野において外国人材を受け入れるために創設された制度です。
介護、外食、建設、製造業などの分野が対象となっており、一定の技能試験や日本語試験に合格した外国人が現場業務に従事できます。
現在の外国人雇用制度の中核を担う制度の一つです。
障害福祉分野では、介護分野の特定技能外国人を受け入れ、グループホームや生活介護事業所などで介護業務や支援業務に従事しているケースが増えています。
人材不足が深刻な現場において、重要な人材確保の手段となっています。
【EPA】
EPA(経済連携協定)は、日本と相手国との経済連携協定に基づいて外国人材を受け入れる制度です。
介護分野では、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどから介護福祉士候補者を受け入れ、介護施設等で働きながら介護福祉士国家資格の取得を目指します。
資格取得後に在留資格「介護」へ移行した場合、継続的な就労が可能となります。
障害者支援施設や共同生活援助(グループホーム)においても受入れが行われており、介護福祉士資格取得後は中長期的な人材として活躍が期待されています。
【技能実習】
技能実習は、外国人が日本で技能や技術を習得し、その知識を母国の発展に活かすことを目的とした制度です。
製造業、建設業、農業、介護など幅広い分野で活用されてきましたが、制度改革により今後は育成就労制度へ移行することが予定されています。
【身分系在留資格】
身分系在留資格とは、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」などを指します。
これらの在留資格を持つ外国人には就労制限がなく、日本人と同様に幅広い業務に従事することができます。
そのため、企業側は業務内容と在留資格の適合性を細かく検討する必要がありません。
障害福祉事業所においても、世話人、生活支援員、職業指導員、事務職員など幅広い職種で雇用することが可能であり、実務上は最も柔軟に活用しやすい在留資格の一つといえます。
従来の技能実習制度は、国際協力を目的としつつも、実態として労働力確保の役割が大きい制度でした。
そのため制度改革が進み、育成就労制度へ移行することが決定されています。
新制度の特徴は、最初から人材育成と就労を一体化している点にあります。
一定期間の就労を通じて特定技能水準へ引き上げることが制度目的とされており、企業側にも教育・育成責任がより明確に求められます。
また、転籍(転職)の扱いも見直されており、労働環境の適正化が制度設計の重要な柱となっています。
外国人を雇用する場合、事業者には単なる雇用契約だけでなく、在留資格制度に基づく各種の受入れ体制整備や支援が求められます。
特に特定技能制度などでは、入国前後を含めた生活・就労支援の実施が制度上の要件とされています。
具体的には、空港への送迎や住居の確保、生活に関するオリエンテーション、日本語学習の機会提供、相談窓口の設置など、就労と生活の両面にわたる支援が必要となります。
これらは「支援計画」として整理され、適切に実施することが義務付けられています。
もっとも、これらの支援業務については、すべてを事業者自身で行う必要はなく、一定の要件を満たす「登録支援機関」に外部委託することが認められています。
そのため、登録支援機関と契約し、実務的な支援業務を委託する事業所も多いです。
一方で、在留資格に関する申請書類の作成は、本人や受入れ企業、または行政書士などの専門職が行うことができます。
また、入国管理局への申請手続については、本人が行うほか、一定の要件を満たした企業職員や申請取次資格を有する行政書士が「申請取次」として提出を行うことが認められています。
そのため、誰でも自由に申請を代行できるわけではなく、法令に基づいた適正な手続と資格要件のもとで運用されています。
このように外国人雇用は、採用すれば終わりではなく、入国前後の支援体制の整備と、在留資格に関する厳格な法令遵守がセットで求められる制度となっています。
企業が外国人を採用する際は、「どの制度を使うか」という視点が極めて重要です。
専門職採用であれば就労ビザ、現場人材であれば特定技能、育成を前提とする場合は育成就労制度というように、目的に応じた制度選択が必要となります。
この選択を誤ると、採用後に業務が制限される、あるいは更新できないといった重大なリスクにつながります。
外国人雇用制度は、在留資格ごとに就労可能な範囲や要件が細かく定められており、単一の仕組みではなく複数の制度が重なり合って構成されています。
加えて、外国人雇用制度は政策動向や社会情勢の影響を受けやすく、制度運用や基準の見直しが継続的に行われる分野でもあります。そのため、企業においては現行制度の理解に加え、今後の制度改正や運用方針の変化にも留意しながら、採用時の在留資格確認や受入体制の整備を含め、継続的に適正な雇用管理を行っていく姿勢が求められます。