更新日:2026/08/16
技能実習制度は、日本で培われた技能や技術、知識を開発途上国等へ移転し、その国の経済発展を担う人材育成を目的として創設された制度です。
制度上は労働力不足を補うための仕組みではなく、国際貢献を目的とした人材育成制度として位置付けられています。
しかし現実には、多くの産業分野で深刻な人手不足が続いており、技能実習生が現場の労働力として重要な役割を担っていることも事実です。
特に介護分野では、高齢化による介護人材不足を背景として、多くの外国人が技能実習生として受け入れられています。
出入国在留管理庁の統計によると、2024年末(令和6年末)時点で日本には約45万6千人の技能実習生が在留しています。
そのうち介護職種の技能実習生は約1万5千人〜1万6千人規模となっており、全体に占める割合は3〜4%程度です。
建設業や食品製造業と比べるとまだ多いとはいえませんが、介護人材不足を背景に受入れは着実に拡大しています。
福祉事業者にとっては、外国人材の受入制度を理解するうえで、まず技能実習制度の仕組みを把握することが重要です。

介護職種が技能実習制度の対象となったのは2017年です。
それ以前は介護分野で技能実習生を受け入れることはできませんでしたが、介護人材不足の深刻化を背景として制度改正が行われました。
介護職種で受け入れられる実習生は、介護施設や障害福祉サービス事業所などで、利用者の身体介護や生活支援に関する業務を行います。
ただし、単純作業だけを行わせることは認められておらず、介護技術の習得を伴う業務であることが求められています。
また、介護分野では利用者の生命や身体に直接関わる業務が多いため、他職種よりも厳しい受入要件が設定されています。
介護職種で技能実習生を受け入れる場合には、以下の要件を満たす必要があります。
○18歳以上であること。
○制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること。
○帰国後、修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること。
○企業単独型技能実習の場合にあっては、申請者の外国にある事業所又は申請者の密接な関係を有する外国の機関の事業所の常勤の職員であり、かつ、当該事業所から転勤し、又は出向する者であること。
○団体監理型技能実習の場合にあっては、従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること又は技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。(※)
○団体監理型技能実習の場合にあっては、本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること。
○同じ技能実習の段階に係る技能実習を過去に行ったことがないこと。
○第1号技能実習の場合、日本語能力試験のN4に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。
○第2号技能実習の場合、日本語能力試験のN3に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。
(※)同等業務従事経験(いわゆる職歴要件)については例えば、以下の者が該当します。
・ 外国における高齢者若しくは障害者の介護施設等において、高齢者又は障害者の日常生活上の世話、機能訓練又は療養上の世話等に従事した経験を有する者
・ 外国における看護課程を修了した者又は看護師資格を有する者
・ 外国政府による介護士認定等を受けた者
技能実習制度は、実習期間や技能の習熟度に応じて
「技能実習1号」「技能実習2号」「技能実習3号」
の3段階に分かれています。
まず技能実習1号は、入国後に講習を受けながら基礎的な技能や知識を習得する段階です。
企業や施設での実習を通じて、日本の介護技術や業務手順を学びます。実習期間は原則として1年以内です。
次に技能実習2号は、1号で習得した知識や技能をさらに発展させる段階です。
所定の技能評価試験(初級)に合格することで移行でき、実習期間は2年以内(1号と合わせて通算最長3年)となります。
介護分野で受け入れられている技能実習生の多くは、この2号段階で業務に従事しています。
さらに優良な受入機関や監理団体のもとで実習を行う場合には、技能実習3号へ移行することができます。
2号修了後に技能評価試験(専門級)に合格することが条件となり、実習期間は2年以内(1号・2号と合わせて通算最長5年)まで実習を継続できます。
このように、技能実習制度では段階的に技能を習得しながら、通算で最長5年間の実習期間を延長できる仕組みが設けられています。
| 区分 | 受入方式 | 在留期間 | 対象職種 |
|---|---|---|---|
| 技能実習1号 | 技能実習第1号イ技能実習第1号ロ | 1年以内(実習1年目) | 原則として職種の制限なし |
| 技能実習2号 | 技能実習第2号イ技能実習第2号ロ | 2年以内(実習2~3年目) | 移行対象職種のみ |
| 技能実習3号 | 技能実習第3号イ技能実習第3号ロ | 2年以内(実習4~5年目) | 移行対象職種のみ |
介護現場における外国人材の受け入れにおいて、現在もっとも一般的であり、かつ事業者・外国人スタッフの双方にとって理想的とされているのが、
「技能実習から特定技能を経て、国家資格(介護福祉士)の取得を目指すルート」
です。
このルートを辿ることで、外国人スタッフは試験免除などの恩恵を受けながらスムーズにステップアップでき、施設側にとっては、日本の介護に慣れた即戦力人材を安定して雇用できるという大きなメリットがあります。
では、具体的にどのような流れでキャリアアップが進んでいくのか、4つのステップに分けて解説します。
入国後、1号(1年)で基礎を学び、技能評価試験に合格して2号(2年)へ移行します。
合計3年間の実務経験を積むことで、次の特定技能へ進むための「実務経験3年」のベースがここで完成します。
技能実習2号を「良好に修了」すると、技能試験と日本語試験がすべて免除で「特定技能1号」に移行できます。
技能実習のときのような厳しい書類申請や監理団体の縛りが減り、夜勤などのシフトもより柔軟に組めるようになります。
特定技能で働きながら(または技能実習の終盤から)、「介護福祉士実務者研修」を受講・修了します。
これで「実務経験3年(技能実習の3年でクリア済み)」と合わせて、国家試験の受験資格が得られます。
筆記試験に合格し、介護福祉士として登録されると、在留資格を「介護」に変更できます。
特定技能は通算5年という「期限(上限)」がありますが、「介護」になれば更新に上限がなくなり、将来的に家族を日本に呼ぶことも可能になります。
介護施設や障害者支援施設では、慢性的な人材不足が続いています。
特に地方部では日本人職員の採用が難しくなっており、外国人材への期待が高まっています。
技能実習生は若年層が多く、意欲的に介護技術を学ぼうとする人も少なくありません。
実際の現場では、食事介助や入浴介助、排せつ介助、レクリエーション支援など幅広い業務に従事しています。
現場では、日本語でのコミュニケーションに苦労する場面もあります。
しかし、支援において最も大切な「相手を思いやる気持ち」に国籍の違いはありません。
実際に福祉の現場では、外国人材が利用者に優しく寄り添い、真摯に支援に取り組む姿を数多く見ることができます。
一方で、外国人材の受入れには、日本語教育や生活支援、文化的な違いへの配慮など、事業者側の負担も発生します。
そのため、単純に人手不足解消だけを目的として受け入れると、期待した成果が得られないケースもあります。
技能実習制度は長年にわたり様々な課題が指摘されてきました。
低賃金労働や長時間労働、人権侵害、不適切な監理体制などの問題が社会問題化し、制度の見直しが進められてきました。
また、介護業務は利用者との信頼関係が重要であるため、言語や文化の壁がサービス品質に影響を及ぼす可能性もあります。
そのため、受入事業者には単なる法令遵守だけでなく、実習生が安心して働きながら学べる環境づくりが求められています。
政府は技能実習制度の課題を踏まえ、新たな「育成就労制度」を創設する方針を決定しました。
育成就労制度は2027年4月1日に施行される予定であり、技能実習制度は段階的に廃止されることとなっています。
育成就労制度では、人材育成と人材確保の両方を制度目的として明確化し、転籍要件の緩和や監督体制の強化などが予定されています。
福祉事業者にとっては、外国人材の活用が今後さらに重要になることが予想されるため、制度改正の動向を継続的に把握しておくことが重要です。
技能実習制度は、本来は国際貢献を目的とした人材育成制度ですが、福祉現場では人材不足を支える重要な存在となっています。
介護分野では日本語能力や教育体制など厳格な要件が設けられている一方、制度上の課題も指摘されてきました。
そのため現在は育成就労制度への移行が進められています。
今後の福祉業界では、外国人材との共生や育成がますます重要なテーマとなるでしょう。
事業者は制度の正確な理解と適切な受入体制の整備を進めることで、質の高い福祉サービスの提供につなげていくことが求められています。