更新日:2026/05/29
障害のある子を育てる親にとって、「自分が亡くなったあと、この子はどう暮らしていくのか」という不安は非常に大きなものです。
これは一般的に「親なきあと問題」と呼ばれています。
実際には、親が亡くなったあとだけではありません。
親の高齢化、病気、認知症、入院などによって、これまでの支援体制が急に維持できなくなる場面も含まれます。
特に、長年家族中心で生活してきた場合には、
• 福祉サービスの利用経験が少ない
• 本人が地域との接点を持っていない
• 家族以外に相談相手がいない
• 金銭管理や通院管理が家族任せになっている
といった課題が表面化しやすくなります。
そのため、「親が元気なうちに、家族以外の支援者とつながっておくこと」が重要になります。
その中心的な役割を担う制度の一つが、計画相談支援です。
計画相談支援とは、障害福祉サービスを利用する際に、本人の希望や生活状況を整理し、適切なサービス利用につなげる支援です。
計画相談支援を担当する相談支援専門員は、
• 本人や家族から話を聞く
• 生活上の困りごとを整理する
• 福祉サービス事業所との調整を行う
• サービス等利用計画を作成する
• 定期的に状況を確認する(モニタリング)
といった役割を担います。
親なきあと問題においては、単に「サービス利用の手続き担当」というだけではなく、本人を地域で支える支援ネットワークの入口としての役割があります。
家族以外の支援者をつくる役割
親子だけで生活が完結しているケースでは、親が支援の全てを担っていることがあります。
しかし、親が高齢になるにつれて、それを維持することは難しくなります。
計画相談支援が入ることで、
「困ったときに相談できる相手」
「本人の状況を継続的に把握している第三者」
ができます。
これは親なきあとに向けて非常に重要です。
特に、長年ひきこもり状態にあるケースや、家族以外との関係が乏しいケースでは、相談支援専門員との関係が、社会との最初の接点になることもあります。
親なきあと問題では、「どのサービスをどう使えばよいか分からない」という悩みが多くあります。
例えば、『グループホーム』『居宅介護』『就労支援』『日中活動』『成年後見制度』
など、制度は複雑です。
相談支援専門員は、本人の状況に応じて必要な支援を整理し、地域資源につなげる役割を担います。
また、本人と事業所との相性、家族の不安、将来的な生活の見通しなども踏まえながら調整を行うことが期待されています。
親なきあと問題では、「今困っていること」だけでなく、「将来どう暮らすか」を考える必要があります。
『一人暮らしが可能か』から『緊急時の対応や医療との連携』など課題は様々です。
相談支援専門員は、現在の生活だけではなく、将来的な地域生活を見据えた支援調整を一緒に考えてくれるパートナーです。
一方で、計画相談支援だけで親なきあと問題を解決できるわけではありません。
ここは非常に重要な点です。
相談支援専門員は「生活そのもの」を担う存在ではありません。
相談支援専門員は、支援を調整する役割を担います。
• 24時間見守る
• 同居して支援する
• 金銭管理を全面的に行う
• 家族の代わりになる
といった役割までは担えません。
「相談支援専門員がいれば安心」と考えられることがありますが、実際には相談支援専門員一人で生活全体を支えることは不可能です。
実際に本人を支えるためには、さまざまな制度や関係機関による多方面の支援体制が必要になります。
計画相談支援は、そうした制度や関係機関と当事者をつなぐ、いわば「ハブ」のような役割を担う存在だと言えます。
親なきあと問題では、家族の不安が大きくなりやすい一方で、本人の意思をどう尊重するかという課題もあります。
例えば、
「親はグループホーム入居を望んでいるが、本人は拒否している」
というケースもあります。
急激な生活環境の変化によって、本人が強い戸惑いや負担を感じてしまうことも少なくありません。
そのため、親が元気なうちから、ショートステイなどを活用し、少しずつ家族以外の環境に慣れていくことも有効な方法の一つです。
こうした将来に向けた準備や環境調整についても、計画相談支援へ相談することでよい方向に向かうことがあります。
親なきあと問題で最も危険なのは、「何も準備がないまま突然限界を迎えること」です。
だからこそ、親が元気なうちから少しずつ準備を整えていくことが重要になります。
親族や支援者、地域の関係機関とのつながりを作っておくことで、親だけに支援が集中しない体制づくりにもつながります。
計画相談支援は、その準備を進めるうえで非常に重要な制度です。
ただし、それは万能ではありません。
計画相談支援は、あくまで障害者総合支援法に基づく制度です。
一方で、遺言や成年後見制度、家族信託などは、民法をはじめとした別の法律に基づく制度になります。
そのため、親なきあと問題に備えるには、福祉制度だけではなく、法律や財産管理の視点も含めて準備を進めていくことが重要です。
「相談支援だけで解決する」のではなく、地域や本人を取り巻く支援者、親族、関係機関などと連携しながら、本人を支える体制を少しずつ作っていくことが、親なきあと問題に向き合ううえで大切なのだと思います。