障害のある子の親なきあと問題に備える成年後見制度をわかりやすく解説。法定後見と任意後見の違い、後見人の費用、報酬助成制度、利用時の注意点まで詳しく紹介します。

親なきあとに備える成年後見制度とは?障害のある子の生活と財産を守る準備をわかりやすく解説

更新日:2026/05/13

親なきあとに備える成年後見制度とは

親が高齢になったとき、あるいは亡くなったあと、障害のある子の生活や財産を誰が守るのか。
この「親なきあと問題」は、多くのご家族にとって切実なテーマです。
特に、契約手続き金銭管理福祉サービスの利用調整が難しい場合には、成年後見制度が重要な選択肢になります。
この記事では、障害を持つ子の親なきあとに備える視点から、成年後見制度の基本と活用方法を解説します。


成年後見制度とは何か

成年後見制度とは、知的障害、精神障害、認知症などにより、判断能力が不十分な方を法律面・生活面で支援する制度です。
本人に代わって契約を行ったり、財産を適切に管理したりする役割を担います。
たとえば、障害福祉サービスの利用契約、施設入所契約、預貯金の管理、不当な契約被害からの保護など、日常生活に直結する支援が可能です。
親が元気なうちは親が担っていた役割を、将来的に第三者が法的に引き継ぐ仕組みともいえます。



障害を持つ子の親なきあとで成年後見制度が注目される理由

親御さんが高齢になると、次のような不安が現実的になります。

• 通帳や生活費の管理を誰がするのか
• グループホームや施設との契約を誰が結ぶのか
• 悪質商法や詐欺から本人を守れるのか
• 兄弟姉妹に負担が集中しないか

こうした問題は、家族の善意だけでは解決しきれない場合があります。
成年後見制度を利用することで、家庭裁判所が選任した後見人等が、継続的かつ法的に本人を支援できます。



成年後見制度には2つの種類がある

成年後見制度は、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」があります。
それぞれ利用する時期や目的、手続の流れに違いがあるため、制度の特徴を理解したうえで、ご本人やご家族の状況に応じた選択をすることが重要です。


法定後見制度

すでに判断能力が不十分な状態にある場合に、家庭裁判所へ申立てをして開始する制度です。
本人の状態に応じて、後見保佐補助の3類型があります。


もっとも支援が必要なケースが「後見」です。
契約内容を理解することや、お金の管理を一人で行うことが難しい場合に利用されます。


その次が「保佐」です。
日常生活はある程度できても、重要な契約や財産管理については支援が必要な場合に使われます。


比較的軽い支援が「補助」です。
基本的には自分で判断できるものの、一部の手続きや契約について手助けがあると安心という場合に利用されます。


申立ての際には、後見人等として家族を候補者(推薦人)に挙げることもできます。
ただし、必ず家族が選ばれるとは限りません。
本人の財産額が多い場合や、不動産管理が必要な場合、親族間に意見の違いがある場合などは、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職後見人が家庭裁判所から選任されることがあります。


迷った場合は、専門家や地域の相談窓口に相談しながら進めることが大切です。


任意後見制度

将来、判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ支援してくれる人を自分で決め、将来お願いしたい支援内容を定めたうえで、公正証書により契約しておく制度です。
障害のある子本人が利用する場合には、契約内容を理解し、自分の意思で契約できるだけの判断能力が必要になります。
その後、認知症や障害などにより判断能力が不十分になった段階で、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、契約の効力が生じ、任意後見人による支援が始まります。
契約した時点ですぐに開始される制度ではありません。


法定後見制度との大きな違いは、家庭裁判所が後見人を選ぶのではなく、本人が元気なうちに信頼できる人を自分で選べる点です。
将来の支援者を自分で決めておきたい方にとって、大きなメリットがある制度といえます。



後見人の費用

成年後見制度を利用する際には、後見人等への報酬が発生する場合があります。
特に、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が後見人に選任された場合は、本人の財産の中から報酬が支払われるのが一般的です。
報酬額は一律ではなく、本人の財産額や業務内容などを踏まえて家庭裁判所が決定します。
親族が後見人に選ばれた場合は、必ずしも報酬を受け取る必要はありませんが、希望する場合には家庭裁判所へ申立てを行い、認められれば報酬が付されることがあります。
また、被後見人の財産が多い場合に後見人を監督する立場として「後見監督人」が選任される場合があります。
この場合、後見監督人にも報酬が発生し、本人の財産から支払われます。
任意後見制度では、任意後見監督人の選任は必須であり、その監督人への報酬が継続的に発生します。


任意後見人への報酬は、契約内容によって無償・有償のいずれにも設定できます。
そのため、成年後見制度を検討する際には、制度の必要性だけでなく、長期的にどの程度の費用負担が見込まれるかも含めて考えておくことが大切です。


貧困世帯への後見人報酬助成制度について

成年後見制度は、判断能力が不十分な方の生活や財産を守るうえで重要な制度ですが、後見人等への報酬負担が利用のハードルになることもあります。
こうした事情に対応するため、多くの自治体では、経済的に困難な方を対象に「成年後見制度利用支援事業」などの名称で、後見人等への報酬を助成する制度を設けています。
対象となるのは、生活保護受給世帯や、これに準ずる低所得世帯であることが一般的です。


助成の内容は自治体によって異なりますが、家庭裁判所が決定した後見人報酬の全部または一部を公費で負担する仕組みが多くみられます。


そのため、成年後見制度を検討する際には、「費用が払えないから無理」と決めつけず、お住まいの市区町村の障害福祉課、地域包括支援センター、社会福祉協議会、専門職へ相談することが重要です。



親なきあと対策としての成年後見制度の注意点

成年後見制度は、障害のある子の親なきあとに備えるうえで有効な制度ですが、万能ではありません。
利用にあたっては、メリットだけでなく注意点も理解しておく必要があります。
後見人が選ばれると、家庭裁判所の監督のもとで財産管理や契約手続きが行われるため、家族がこれまで行っていたような柔軟な財産の使い方は難しくなります。
また、専門職後見人が選任された場合には、本人の財産から報酬が継続的に発生することがあり、長期的な負担になる点にも注意が必要です。


成年後見制度は本人保護のための仕組みですが、その一方で、安全確保や財産保全を目的として、契約や財産処分などの自由が一定程度制限される制度でもあります。
そのため、成年後見制度は「支援の制度」であると同時に「権利を制限する制度」でもあることを踏まえ、必要性を慎重に検討することが重要です。


まとめ

障害を持つ子の親なきあとに備えるうえで、成年後見制度は、契約・財産管理・権利擁護を担う重要な制度です。
親が元気なうちから情報収集し、将来誰がどのように支えるのかを具体的に検討することが大切です。
一方で、後見人が付くことで、日常の財産管理だけでなく、相続が発生した際の遺産分割協議などでも、本人保護の観点から判断が慎重になり、家族間で柔軟に話し合いを進めにくくなる場面が出ることもあります。
「まだ先の話」と思っているうちに、親の体調変化は突然訪れることがあります。
成年後見制度を含め、早めに準備を始めることが、本人の安心した暮らしにつながります。