親なきあと問題に備えるために、障害のあるご本人の生活費、収入と支出の把握、必要資金の計算、遺言・信託・贈与など資産の残し方、家族の不安を減らす準備についてわかりやすく解説します。

親なきあとに備えて準備すべきお金のこと|障害のある子の将来に必要なお金・相続・支援体制

更新日:2026/05/01

親なきあとに備えて準備すべきお金のこと

親がいなくなった後、ご本人が安心して生活を続けられるかどうかは、事前の準備に大きく左右されます
何の備えもないまま一人になってしまうと、必要な支援につながれない可能性があります。
ご本人が支援の内容を十分に理解できなかったり、自ら助けを求めることが難しかったりするケースも少なくありません。
では、どのような準備が必要なのでしょうか。
この問題はご本人の状況や環境によって大きく異なりますが、本記事では一般的なケースを想定し、基本的なお金の準備の考え方を紹介します。


お金の準備

ご本人が安心して生活を続けるためには、「お金」の問題を避けて通ることはできません。
どの程度の資金を準備すべきか、またそれを誰にどのように託すのかなど、検討すべき課題は多岐にわたります。
本章では、これらの点を順を追って整理していきます。


(1)本人の収入

まずは、ご本人にどの程度の継続的な収入があるのかを正確に把握することが重要です。
収入の種類としては、就労継続支援事業所での工賃や給与、一般就労による給与、さらに障害年金や生活保護費などが挙げられます。
これらの収入について、それぞれ月額ベースでいくらになるのかを整理し、安定的に得られる収入の総額を把握します。
この把握が、今後の生活設計や不足額の検討の前提となります。


(2)支出の把握

ご本人が生活を送るうえで必要となる支出を整理し、具体的な金額を把握します。
主な支出としては、家賃やグループホームの利用料、食費、医療費、福祉サービスの利用料などが挙げられます。
また、成年後見制度を利用する場合には、後見人への報酬が発生する点にも留意が必要です。
これらの支出について、可能な限り月額ベースで整理し、継続的に必要となる生活費の全体像を把握することが重要です。


(3)準備が必要になる期間を考える

親による支援が終了した後、ご本人が単独で生活を続ける期間を見積もる必要があります。
この期間は、必要となる資金総額を算出するうえでの前提となる重要な要素です。
一般的には、親とご本人それぞれの平均寿命を参考にし、その差からおおよその期間を想定します。
ただし、障害の種別や健康状態によっては平均寿命が一般と異なる場合もあるため、その点を踏まえて個別に検討することが望ましいでしょう。


(4)必要なお金を計算する

これまでに整理した収入と支出をもとに、不足額を算出します。
具体的には、毎月の支出が収入を上回る場合、その差額が不足額となります。
この不足額に、前項で検討した「準備が必要となる期間」を乗じることで、将来的に必要となるおおよその資金総額を試算することができます。


(5)どの様に残すか考える

誰に対して、どのような方法で資産を引き継ぐのかを検討します。
ご本人の将来を心配するあまり、多額の財産を残そうと考える方も少なくありません。
しかし、ご本人の判断能力の程度や、親以外に支援を担う親族・関係者の有無によって、適切な資産の残し方は大きく異なります。
そのため、個別の状況に応じた方法を選択することが重要です。
一般的な手段としては、遺言、信託、贈与などが挙げられます。
これらはいずれもメリット・デメリットが存在するため、ご自身の状況に照らして最適な方法を検討する必要があります。


(6)財産の残し方について法的な効力を持たせる

これまでに整理した必要資金や資産の残し方については、最終的に法的な効力を持たせる形にしておくことが重要です。
そうすることで、親がいなくなった後も、あらかじめ定めた内容に沿って適切に資産が承継される仕組みを確保することができます。
例えば、遺言書を作成しておくことで、相続をめぐるトラブルの予防につながる場合があります。
親としては、障害のあるご本人だけでなく、その周囲の家族も含めて、円満な関係が維持されることを望むのが一般的です。
だからこそ、事前に法的な形で意思を明確にしておくことが、将来的な紛争の防止につながります。
適切な準備を行い、ご本人とご家族の双方にとって安心できる環境を整えていくことが重要です。



まとめ

親なきあとへの備えは、お金の準備だけで完結するものではありません。
日々の生活環境や住まい、支援体制など、さまざまな要素が相互に関係しています。
それぞれの要素を一つずつ整理し、ご本人の状況に応じて丁寧に検討していくことが重要です。
こうした準備を進めることは、ご本人の将来の安心につながるだけでなく、ご家族全体の不安を軽減し、今を安心して過ごすための土台にもなります。
将来の安心は、日々の生活の質にも直結します。
無理のない範囲で準備を進め、安心できる環境を整えていただけたらと思います。