障害者の親なきあと問題に備えるため、法定相続分と遺留分の基本をわかりやすく解説。障害のある子に財産を多く残す方法、兄弟姉妹との公平性、遺言書や成年後見制度の注意点まで詳しく紹介します。

法定相続分と遺留分をわかりやすく解説|障害者の親なきあと対策

更新日:2026/05/07

障害者の親なきあとに備えるための法定相続分と遺留分

障害のある子どもを支える親にとって、

「自分が亡くなったあと、この子の生活はどうなるのか」

は切実な問題です。
いわゆる「親なきあと問題」と呼ばれるテーマの中でも、財産をどう残すかは非常に重要です。
その際に避けて通れないのが、「法定相続分」と「遺留分」という制度です。


親としては、障害のある子に多く財産を残して生活基盤を確保したいと考える場合もあれば、他の兄弟姉妹に多く残し、将来の見守りや支援を託したいと考える場合もあります。
その一方で、公平感や将来の負担、家族間の争いが気になるところです。
この記事では、障害者の親なきあと対策として知っておきたい、法定相続分と遺留分についてわかりやすく解説します。



相続順位と法定相続分とは

相続では、亡くなった方に遺言書がない場合、民法で定められた「法定相続分」を基準に遺産分割を進めることになります。
配偶者は常に相続人となり、それに加えて子ども、直系尊属(父母など)、兄弟姉妹のうち、相続順位の高い人が相続人になります。


【相続順位の考え方】
民法では、配偶者は常に相続人となり、それとは別に血族相続人には優先順位があります。

順位
 

相続人
 

備考
 

常に相続人
 

配偶者 いつでも相続人

第1順位
 

子ども(代襲相続人含む) 子がいれば父母・兄弟姉妹は相続しない

第2順位
 

父母(父母がいない場合、祖父母) 子がいない場合に相続

第3順位
 

兄弟姉妹(いない場合、甥・姪) 子も父母もいない場合に相続


【法定相続分】
法定相続分とは、民法で定められた「相続人ごとの基本的な取り分」です。

相続人の組み合わせ
 

配偶者の法定相続分
 

その他の相続人の法定相続分
 

配偶者と子ども
 

2分の1 子ども全員で2分の1(人数で均等)

配偶者と父母(直系尊属)
 

3分の2 父母全体で3分の1

配偶者と兄弟姉妹
 

4分の3 兄弟姉妹全体で4分の1
子どものみ(配偶者なし) ― 子ども全員で均等

父母のみ(配偶者・子なし)
 

― 父母全体で均等

兄弟姉妹のみ(配偶者・子・父母なし)
 

― 兄弟姉妹全員で均等※異父兄弟や異母兄弟の法定相続分は、全血兄弟の1/2



障害のある子のために財産をどう残すか

親としては、生活支援や福祉サービスだけでは足りない部分を補うため、障害のある子に多めに財産を残したいと考えることがあります。
その場合は、遺言書によって財産の配分を指定することが有効です。
たとえば、「長男には預金の7割、次男には3割」などと定めることができます。


一方で、すべてのケースで障害のある子に多く残せばよいとは限りません。
障害特性や判断能力の状況によっては、金銭管理が難しい場合や、浪費、悪質商法、詐欺被害などのリスクが懸念されることもあります。
そのため、あえて本人に多額の財産を直接残さず、兄弟姉妹など信頼できる家族に一定の財産を承継させ、生活支援や見守りを託したいと考える親御さんもいます。


また、財産は残すこと自体が目的ではなく、本人の生活のために適切に使われてこそ意味があります。
大切なのは、単純に「誰に多く残すか」ではなく、本人の生活の安定につながる形で財産を活かせるかという視点です。


障害のある子が将来も安心して暮らせるよう、住居資金、生活費、成年後見制度の利用費用、日常的な支援体制などを見据えて設計することが重要です。



遺留分とは何か

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。
遺言によって自由に財産を配分できるとはいえ、まったく相続できない人が生じないよう設けられている制度です。


たとえば、子ども2人が相続人で、父親が「全財産を障害のある長男に相続させる」と遺言したとします。
この場合、もう一人の子どもは、遺留分を侵害されていれば一定額の金銭を請求できる可能性があります。
これを遺留分侵害額請求といいます。


つまり、障害のある子にすべて残したいと思っても、他の相続人の権利を完全に排除できない場合があるのです。
もっとも、遺留分は必ず請求しなければならないものではなく、各相続人が請求しない判断をすることも可能です。
たとえば、障害のある兄弟姉妹の生活を優先したいとの考えから、権利を行使しないケースもあります。


一方で、成年後見人等が選任されている場合は注意が必要です。
後見人は本人の財産を守る立場にあるため、遺留分が侵害されている場合には、本人の利益を最優先します。
本人の利益になると判断されれば、遺留分侵害額請求が行われることもあります。
そのため、「家族だから請求しないだろう」と見込んで遺言内容を決めるのは危険です。
特に、将来後見人が関与する可能性がある家庭では、遺留分も踏まえた相続設計が重要です。



親なきあと対策で重要なのは“納得感”

相続トラブルは「なぜこの分け方なのか説明がない」ことで起こることもあります。
たとえば、障害のある兄弟に多く残す場合でも、他の兄弟姉妹が事情を理解し、納得していれば争いになりにくくなります。
そのため、次のような準備をしておくことが効果的です。

• 遺言書を作成する
• 財産を多く残す理由を書き残す
• 家族会議で親の考えを共有する
• 信託や後見制度も含めて検討する

単に法律上の割合だけを見るのではなく、家族関係まで見据えて準備しておくことで、いざというときにも家族がまとまりやすくなります。



専門家に相談する意義

親なきあと問題では、相続だけでなく、住まい、金銭管理、福祉制度の利用、後見人の選定など、多面的な課題があります。
そのため、遺言書の作成や家族への説明整理など、早い段階から専門家に相談することが有効です。
ただし、相続や法律の知識があるだけでは十分とは限りません。
障害福祉サービス、成年後見制度、本人の生活実態などは、一般的な相続実務だけでは見落とされることもあります。
親なきあと問題は、障害福祉や福祉制度への理解も踏まえて助言できる専門家かどうかが重要です。
制度を理解しながら、本人の暮らしや家族関係に合った形を整えていくことが、将来の安心につながります。



まとめ

親なきあと問題で本当に大切なのは、財産を残すことだけではありません。
残された家族が困らず、支え合える形を準備しておくことです。
早めの対策が、子どもや家族の将来を守る第一歩になります。