親なきあと問題への備えとして注目される任意後見制度について解説。親の認知症や判断能力低下に備え、障害のある子への支援を円滑につなぐ方法や見守り契約との関係、成年後見制度との連携についてわかりやすく説明します。

親なきあと問題に備える任意後見とは?障害のある子を支える親が知っておきたい制度を解説

更新日:2026/05/15

親なきあとに備える任意後見という選択肢

障害のある子を支える親にとって、
「自分が高齢になり判断力が低下したら、この子の生活はどうなるのか」
は切実な課題です。
いわゆる「親なきあと問題」は、親が亡くなった後だけでなく、認知症などで支援が難しくなる時点から始まるともいえます。
そこで有効な備えの一つが、任意後見契約です。
本記事では、親なきあと問題への備えとして注目される任意後見制度について、わかりやすく解説します。


任意後見とは何か

任意後見とは、将来、本人の判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ信頼できる人と契約を結び、財産管理や生活上の手続支援などを任せる制度です。
元気なうちに、公正証書で契約をしておき、実際に認知機能の低下などが生じた段階で、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると契約が効力を持ちます。
法定後見と異なり、「誰に頼むか」「どこまで任せるか」を事前に本人が決めやすい点が大きな特徴です。


任意後見の申立て方法と申立人について

任意後見契約は、公正証書で契約を締結しただけでは、直ちに効力が生じるわけではありません。
本人の判断能力が低下し、財産管理や各種手続の支援が必要になったときに、家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立てを行い、任意後見監督人が選任されることで、はじめて任意後見契約の効力が発生します。
申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者などです。
実際には、本人の変化に日頃から気づきやすい親族や、契約に基づいて関わっている任意後見受任者が申立てを行うことが多くあります。


もっとも、任意後見は「判断能力が低下したら始まる制度」である一方、実際にその変化を誰が把握し、いつ申立てをするかが重要になります。
そのため、実務では任意後見契約とあわせて見守り契約を締結することが少なくありません。
見守り契約では、任意後見受任者等が定期的に連絡や訪問を行い、本人の生活状況や心身の状態を確認します。
そして、任意後見が必要な状態になったと判断される時期に、家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立てを行います。



親が任意後見を結ぶことで、子への支援をつなぐ方法

任意後見契約は、障害のある子本人だけが利用する制度ではありません。
障害のある子を支えている親が任意後見契約を結んでおくことで、親の判断能力が低下した場合にも、親の生活や財産管理を支えると同時に、子への支援体制を円滑に引き継ぎやすくなります。


親が高齢となり、認知症などによってこれまでの支援を続けることが難しくなると、子の生活に影響が及ぶことがあります。
そのため、親自身の判断能力が低下した場合を見据えて準備しておくことが重要です。


実務上の工夫として、親の任意後見が開始した後、必要に応じて障害のある子について成年後見制度等の利用を検討し、家庭裁判所への申立てを行うことを想定しておく方法があります。


たとえば、親族や信頼できる第三者が親の任意後見受任者となり、親の判断能力低下により任意後見が開始した段階で、子についても成年後見や保佐、補助の利用が必要かを確認し、必要に応じて申立てを進める形です。
これにより、親による支援が難しくなった時点で、子に対する法的支援体制へ移行しやすくなり、生活上の空白期間をできる限り防ぎやすくなります。



早めの準備が重要です

任意後見契約は、本人に十分な判断能力があるうちに行う必要があります。
そのため、「まだ早い」と思う時期こそ検討に適しています。
障害のある子の将来を守るためには、親の相続対策だけでなく、親自身が支援できなくなったときの仕組みづくりも重要です。
任意後見は、その中心となり得る制度の一つです。