更新日:2026/02/02
相談支援事業についてどのように感じているか話を聞くと、多くの場合、次のような反応が返ってきます。
「食べていけるの?」「大変じゃない?」
今回は、相談支援事業の需要に焦点を当て、相談支援事業の現状と他の福祉サービスとの比較から、今後の動向を考察したいと思います。
まず、令和4年度における東京都・埼玉県・千葉県・茨城県の相談支援事業について、見込量(計画値)と実績を比較した表を作成しました。
合わせて、相談支援事業だけでなく「共同生活援助(グループホーム等)」や「就労継続支援B型」などの主要障害福祉サービスについても同じ形式で整理しています。
この比較を通じて、考察したいと思います。
以下の表をご覧ください。
※ 神奈川県は令和4年度の実績値が未公表のため、本表では省略しています。
令和4年度 計画相談支援
|
地域 |
実績 |
見込み達 |
達成率 |
|
東京 |
16730 | 17,037 | 98.2% |
|
埼玉 |
7,631 | 13,849 | 55.1% |
|
千葉 |
8,924 | 9,976 | 89.4% |
|
茨城 |
6,047 | 2,019 | 29.9% |
令和4年度共同生活援助
| 地域 | 実績 | 見込み達 | 達成率 |
| 東京 | 14,866 | 13,674 | 108.7% |
| 埼玉 | 8,881 | 6,445 | 137.8% |
| 千葉 | 7,748 | 7,065 | 109.6% |
| 茨城 | 3,795 | 3,543 | 107.1% |
令和4年度就労継続支援B型
| 地域 | 実績 | 見込み達 | 達成率 |
| 東京 | 402,108(人日分) | 351,100(人日分) | 114.5% |
| 埼玉 | 272,514(人日分) | 194,844(人日分) | 139.9% |
| 千葉 | 163,060(人日分) | 142,236(人日分) | 114.6% |
| 茨城 | 6,511(人) | 6,071(人) | 107.2% |
上記の表を比較すると、相談支援事業の達成率が、他の障害福祉サービスと比べて低い傾向にあることがお分かりいただけると思います。
この結果から、行政計画上において相談支援事業は、
「現状よりも、より多く提供されることを想定されているサービス」
である可能性が高いと推察されます。
相談支援事業には、いわゆる本人作成計画(セルフプラン)という仕組みが存在します。
この制度により、相談支援専門員が関与しない形でサービス等利用計画が作成されるケースも一定数存在します。
一方、共同生活援助や就労継続支援B型などの他の障害福祉サービスは、原則として
「利用決定=サービス提供実績」となる仕組みであるため、行政計画に対する達成率が高くなりやすいという、事業構造上の特性があります。
こうした制度的背景を踏まえると、相談支援事業の達成率が相対的に低く見える要因の一つとして、セルフプランの存在が影響していると考えられます。
しかしながら、セルフプラン率が高いという事実は、見方を変えれば、相談支援専門員が関与する余地が依然として大きいことを意味します。
すなわち、相談支援事業には、今後も一定の潜在的需要が残されている分野であると捉えることができます。
その一例として、神奈川県秦野市の取組が挙げられます。
「第7期秦野市障害福祉計画・第3期秦野市障害児福祉計画(令和6年度〈2024年度〉〜令和8年度〈2026年度〉)」
では、次のように明記されています。
相談内容が複雑・多様化している一方で、指定特定相談支援事業所が増えない状況にあり、年々セルフプラン率が高くなっている。
特定相談支援事業所および障害児相談支援事業所の拡充、相談支援体制の強化を図ることで、セルフプラン率の低減を目指す。
このように、セルフプランから計画相談支援への移行を明確な政策目標として掲げている自治体も、既に存在しています。
【東京都】
東京都では3つの基本理念を掲げ、その基本理念のもと、5つの施策目標を展開していきます。
5つの施策目標のうちの1つに、
・地域における自立生活を支える仕組みづくり
入所施設・精神科病院から地域生活への移行を促進するとともに、地域生活基盤と相談支援体制を整備すること等により、障害者が地域で安心して自立生活を送れるようにします。
と記載され、相談支援の体制整備の促進が明確に記されています。
【埼玉県】
障害福祉サービス等の利用状況を見ると、「相談支援」については、特に入所施設等から地域生活へ移行するための相談支援を担う地域移行支援において、計画上の見込量に対して利用実績が伸び悩んでいる状況が確認されます。
一方で、「相談支援体制の充実・強化」に関する指標については、いずれの項目においても計画の見込量を大きく上回る実績が示されており、行政として相談支援体制の整備・強化に重点を置いて取り組んできたことがうかがえます。
このことは、相談支援そのものの必要性が低いのではなく、むしろ相談支援を必要とするケースが増加・高度化している一方で、地域移行支援などの個別支援が十分に行き渡っていないという構造的な課題を示していると考えられます。
【千葉県】
第八次千葉県障害者計画においては、地域における相談支援体制の充実が重要な施策として明確に位置付けられています。
これは、障害のある人が地域で安心して生活を継続していくために、相談支援が果たす役割の重要性が一層高まっていることを示すものです。
また、ノーマライゼーション理念の浸透や、障害のある人の権利擁護の推進が求められる中で、自ら意思決定を行うことに困難を抱える障害のある人に対する意思決定支援の重要性が指摘されています。
そのため、厚生労働省が策定した「意思決定支援ガイドライン」について、相談支援事業所等への周知・啓発を進めることが求められています。
このように、相談支援事業は単なるサービス利用調整にとどまらず、本人の意思や権利を尊重し、地域生活を支える中核的な役割を担うものとして、その機能強化が期待されています。
【茨城県】
障害者の現状と課題として、計画では11の項目が挙げられており、そのうちの一つとして、相談支援体制の充実が位置付けられています。
具体的には、令和8年度末までに、各市町村または各圏域に少なくとも1か所の基幹相談支援センターの設置を促進し、総合的かつ専門的な相談支援体制を確保することが目標として掲げられています。
あわせて、県においても、地域自立支援協議会連絡会を通じて市町村自立支援協議会との連携強化を図り、地域全体としての相談支援体制の充実を推進することとされています。
このように、相談支援体制の強化は、単なる事業拡充にとどまらず、市町村・圏域・県が一体となって取り組むべき重要課題として、具体的な数値目標と実施方針を伴って明確に示されています。
障害福祉事業の報酬体系は、基本報酬に加え、一定の要件を満たすことで算定できる「加算」によって構成されています。
これらの加算は、原則として3年ごとに行われる報酬改定の中で、その時々の社会情勢や制度上の課題を踏まえ、新設・見直し・調整が行われています。
実務の現場においては、基本報酬のみで安定的に事業運営を行うことは難しく、多くの事業者にとって加算は経営を成り立たせるための重要な要素となっています。
また、加算制度は単なる報酬上乗せの仕組みにとどまらず、国が障害福祉施策を誘導するための調整機能としての役割も担っています。
例えば、人材確保が難しいサービスや、ニーズは高いものの担い手が不足している分野については、加算を手厚く設けることで事業参入や体制整備を促す一方、政策的な優先度が相対的に低い分野では、加算の整理・縮小が行われることもあります。
このように、加算の設計や見直しの方向性を読み解くことで、国がどの分野を強化しようとしているのか、また今後どの障害福祉サービスに重点が置かれていくのかを把握することができます。
【サービス利用支援費】
機能強化型サービス利用支援費(Ⅰ) (1月につき2,014単位)【前回から150単位UP】
機能強化型サービス利用支援費(Ⅱ) (1月につき1,914単位)【前回から150単位UP】
機能強化型サービス利用支援費(Ⅲ) (1月につき1,822単位)【前回から150単位UP】
機能強化型サービス利用支援費(Ⅳ) (1月につき1,672単位)【前回から50単位UP】
サービス利用支援費(Ⅰ) (1月につき1,572単位)【前回から50単位UP】
【継続サービス利用支援費】
機能強化型継続サービス利用支援費(Ⅰ) (1月につき1,761単位)【前回から148単位UP】
機能強化型継続サービス利用支援費(Ⅱ) (1月につき1,661単位)【前回から148単位UP】
機能強化型継続サービス利用支援費(Ⅲ) (1月につき1,558単位)【前回から148単位UP】
機能強化型継続サービス利用支援費(Ⅳ) (1月につき1,408単位)【前回から48単位UP】
継続サービス利用支援費(Ⅰ) (1月につき1,308単位) 【前回から48単位UP】
令和6年度報酬改定では、生活介護や就労系サービスが横ばいから微増にとどまる中、相談支援事業については基本報酬および体制評価の両面で相対的に大きな引き上げが行われており、政策的に重視されている分野であることがうかがえます。
また、相談支援事業に携わる職員についても、障害福祉従事者処遇改善緊急支援事業補助金の対象となるなど、相談支援事業に対する報酬・人材確保の両面でのテコ入れが進められていることが分かります。
ご紹介したデータや実例からも分かるように、福祉事業は国の報酬体系や各種加算制度によって、事業の収益性や運営バランスが大きく左右されます。
そのため、国がどの分野やサービス形態の福祉事業に重点を置き、どのような方向性で制度設計や改正を進めているのかを把握することは、極めて重要です。
例えば、京都府における就労継続支援B型事業所への総量規制の導入や、就労選択支援事業の創設は、福祉制度の見直しと需要変化への対応を示す代表的な事例といえます。
また、2025年に発覚した障害福祉サービスにおける不適切な報酬請求問題なども影響し、今後は相談支援サービスの重要性が一層高まることが予想されます。
福祉事業は多様な法人・事業者が参入する分野であるため、サービス種別や報酬構造にばらつきが生じやすく、その結果、収益性や労働負担に偏りが生じるケースも少なくありません。
制度改正や報酬改定が事業運営にどのような影響を与えるのかを正しく理解することが、持続可能な福祉事業経営につながるといえるでしょう。
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