更新日:2026/01/24
2025年11月、読売新聞の報道により、障害福祉サービスの一つである就労継続支援A型事業所における報酬の過大請求が疑われる事案が明らかになりました。
本稿では、本事例において問題とされた過大請求のスキームについて解説します。
大阪市内の福祉関連会社「K社」は、就労継続支援A型事業所を複数運営しています。
就労継続支援A型およびB型では、利用者が一般企業等に就職し、その後継続して6カ月以上就労した場合に、事業所が全ての対象利用者分について「就労移行支援体制加算」を算定できる制度があります。
これは、利用者の一般就労への移行・定着を支援し、その成果を評価するための加算です。
しかし、本件では、「K社」傘下のA型事業所が、利用者をグループ内で「一般就労」として就労させた後、6カ月が経過すると再び同じA型事業所の利用者として扱い、これを繰り返すことで複数回にわたり「就労移行支援体制加算」を算定していた疑いが報じられています。
この手法により、同一利用者を複数の「定着者」としてカウントし、過大な報酬請求が行われた可能性が指摘されています。
これは本来の就労支援の目的を大きく逸脱し、過大な請求を行っていると言っても過言ではありません。
また、大阪市は監査を実施し、返還請求や制度設計の改善を検討しています。
今回の事例において特筆すべき点は、その過大請求額の大きさにあるでしょう。
報道等によれば、その額は「20億円超」に上ると予想されています。
この金額がいかに異常であるかは、事業規模と照らし合わせることでより明確になります。
K社は大阪市内で就労継続支援A型事業所を5か所運営しており、今回の事例には少なくとも3か所以上が関与したとされています。
一方で、大阪市内では、令和8年1月1日現在で293か所 A型事業所が運営されています。
にもかかわらず、2024年度において、当該3事業所が受け取った加算金を含む給付金の総額は約50億円に達し、市内全体のA型事業所への支給総額のおよそ4割を占めていました。
さらに、大阪市議会は、A型事業所に対する給付金の支給総額が当初予算を上回る見通しとなったことを受け、30億円の補正予算を編成し、これを可決しています。
こうした経緯を踏まえると、制度運用を十分に監視できなかった行政・議会の責任、ならびに公金を過大に請求した企業の行為については、今後見直されることが予想されます。
障害福祉事業の分野においては、従来より不正請求が繰り返し問題視されてきました。
その背景には、報酬単価や各種加算制度の複雑化があり、悪意のない算定誤り、いわゆる「うっかり請求」から、コンプライアンス意識の低下に起因する悪質な不正請求まで、さまざまなケースが存在しています。
いずれにせよ、今回の事例を通じて、監査体制やチェック機能が十分に機能していなかった可能性は否定できません。
結果として、多額の公費が長期間にわたり不適切に支給されていた疑いが生じています。
今後は、就労選択支援や相談支援事業の適切な活用を通じて、利用者の就労状況や支援内容を多面的に把握する仕組みが強化されていくことが予想されます。
また、就労継続支援A型・B型事業所における活動内容や就労実態についても、これまで以上に厳格な確認が行われるようになるでしょう。
こうした動きについては、「規制の厳格化」と捉えるよりも、これまで制度の趣旨から乖離していた運用を是正し、本来あるべき姿へと軌道修正する過程と見ることもできます。
その意味において、障害福祉サービスの信頼性を回復するための前向きな変化として評価すべき側面があると考えられます。
こうした不正請求や過大請求を契機として制度の見直しが行われる際に、日頃から誠実に事業を運営している事業者や、現場で支援に携わる職員、そして真摯に就労訓練に取り組んでいる利用者が、不利益を被ることのないよう願うばかりです。
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