更新日:2026/02/05
2024年12月28日、年の瀬も迫る中、障害福祉に携わる関係者にとって看過できない重大なニュースが報じられました。
それは、障害年金の審査において、本来は医師が行うべき支給可否の判定記録を、日本年金機構の障害年金センター職員が独断で破棄し、別の医師に再判定を依頼していたという問題です。
本稿では、この障害年金判定記録破棄問題について、社会福祉士の視点から制度上の問題点や、今後求められる対応について整理・解説していきます。
疾病や障害により日常生活や就労に制限を受ける状態となった場合、所得保障制度として「障害年金」が設けられています。
障害年金は、老齢年金とは異なり、障害の原因となった傷病について一定の要件を満たした時点(障害認定日)にさかのぼって支給の可否が判断される点が特徴です。
障害年金の実務的な審査・支給事務は、日本年金機構の障害年金センターが担っています。
原則として、医師が障害の状態を認定し、その結果が障害年金の認定基準に該当すると判断された場合に、障害年金が支給される仕組みとなっています。
このように、障害年金制度において中核をなすのが、医師による障害状態の判定です。
しかし今回、日本年金機構の障害年金センターにおいて、本来その権限を持たない職員が、医師の判定について「認定が甘すぎる」などと独断で判断し、判定記録を破棄したうえで、別の認定医に再度判定を依頼していたことが明らかになりました。
この結果、本来であれば障害年金の支給対象となっていた可能性のある人が、不支給と判断されていた恐れがあり、当事者の生活や権利に深刻な影響を及ぼしかねない事態として、大きな問題となりました。
厚生労働省によると、2024年5月以降に判明しているものだけでも、
当初は支給相当と判断されていたものが不支給判定に変更されたケースが11件、
支給はされたものの下位等級へと変更されたケースが6件、
当初は未判定であったものの最終的に不支給と判断されたケースが24件、
合計41件確認されています。
これら41件について、日本年金機構の常勤医師が判定の妥当性を確認したところ、認定医が変更された主な理由は「審査スケジュールを順守するため」であり、判定内容自体に問題はなかったとされています。
この結果を踏まえ、厚生労働省は、恣意的な審査や支給可否の判断は行われていなかったとの見解を示しました。
一方で、再発防止策として、今後は別の認定医に判定を依頼し直す場合には、当初の認定医の意見も適切に反映させたうえで、複数の認定医による審査を行う方針が示されています。
また、関係職員へのヒアリング調査を実施し、その結果を4月末に公表するとしています。
権限を持たない職員が、審査に関わる重要な書類を破棄することは、制度運用上あってはならない重大な問題です。
その結果として不利益を被った可能性のある当事者の心情を思うと、やり切れない思いを抱かざるを得ません。
一方で、今回の問題を単に個々の職員の不適切行為として片付けるのではなく、なぜこのような事態が生じたのかを社会全体で考え、声を上げ、改善に向けた行動(ソーシャルアクション)につなげていくことが、より良い制度・社会の形成につながると私は考えます。
私が本件を通じて感じた主な問題点は、以下のとおりです。
障害年金の審査をめぐっては、以前から
「判定が甘い医師がいる」
「認定医によって結果にばらつきがある」
といった声が聞かれてきました。
過去、難聴の有名音楽家に関する報道などをきっかけに、この点が社会的に注目されたこともあります。
障害年金の認定基準自体は存在するものの、その運用や判断過程が一般には見えにくく、結果として不透明さや不信感を生みやすい構造になっているとも言えます。
今後は、より明確で分かりやすい審査基準の提示や、判断プロセスの透明性を高めることが、公正・公平な審査の実現につながるのではないでしょうか。
例えば、高齢分野における要介護認定では、ケアマネジャーや医師など複数の専門職が関与し、協働して判断が行われています。
障害年金の認定においても、医学的視点に加え、障害福祉に精通した専門職の意見を参考にする仕組みを検討する余地があると考えられます。
また、障害年金の受給者数や予算が増加する中で、制度運用に対する何らかの財政的・事務的なプレッシャーが背景に存在している可能性も否定できません。
もちろん、こうした事情があったとしても、権限のない職員が医師の判定を破棄する行為は決して許されるものではありません。
しかし、問題の背景として構造的要因が存在している可能性については、冷静に検証する必要があると考えます。
障害年金制度は、障害のある人だけのための制度ではなく、誰もが病気や障害を負う可能性のある社会において、すべての国民の生活を支えるセーフティネットです。
だからこそ、その審査過程は公正かつ透明でなければならず、誰もが納得できる形で運用される必要があります。
今回の問題を契機として、障害年金の審査基準や運用体制が改めて検証され、国民が安心して利用できる制度へと改善されていくことを強く望みます。
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